「ハーレム禁止の最強剣士!」ブログ

「小説家になろう」「カクヨム」で青葉台旭の名前で小説を書いています。その新規投稿の告知をします。読んだ小説の感想や、観た映画の感想を書いています。撮った写真を載せています。

「悪の力」と「正義の心」

*若干、進撃の巨人のネタバレがあります。

最近、「悪の力で正義を為す」という物語について考えている。

昔からスーパーヒーローものなどでは定番の設定の一つだ。

例えば仮面ライダーは悪(ショッカー)と戦うヒーローだが、彼の肉体を改造して超人的な力を与えたのは他ならぬショッカーの科学力だ。だから、仮面ライダーが変身するときはライダーベルトのショッカーのエンブレムがパカッと開き、中から風車が現れるわけだ。

つまり、悪によって改造された肉体から正義の心が現れるという象徴だ。

デビルマンなどもそうだし、最近の話題作で言うと進撃の巨人なども「自ら巨人になることで巨人に対抗する」という意味で、大きなくくりでは「悪の力で正義を為す」ストーリーの一つだろう。

ヒーローたちは自分の力が悪によって与えられたものであること知りつつも、自らを納得させて正義の為にその力を使う、という展開も定番だ。

もちろん、超人どうしのアクションが無ければエンターテイメントとして成立しないわけだから、作者としては、悪の力であれ何であれ主人公にそれを使ってもらわなければ、お話にならない。

そもそも、スーパーヒーローのスーパーヒーローたる所以は、その超人的な能力(=暴力)なわけだから、暴力を絶対悪と仮定するなら、(アンパンマン以外の)全てのヒーローは正義のために悪の力に手を染めているわけだ。

そして、多く場合「正義」とは、誰かを(恋人や家族や、名も知らぬ無辜の市民たち)の生命・財産・権利・尊厳などを守ることである、と設定される。

ちょっと捻りの効いたストーリーだと、物語のラストで主人公が市民たちを守るために「悪の力」を行使したがゆえに、その守ったはずの市民たちからバッシングを受け、ヒーローは傷心を抱えて町を去る、というビターな結末が待っていたりする。

しかし……と、私は思う。

本当に「市民のために悪の力に手を染める」事が「正義」なのか、と。

市民のためであれ、正義のためであれ、悪の力を借りることはやっぱり悪でしかなく、それは巡り巡って助けたつもりの人々をかえって不幸に陥れることになりはしないか、と。

私の考えた小説

むかしむかし、あるところに小さな王国があった。

王の宮殿には〈魔法の水〉がこんこんと湧き出る泉があり、その〈魔法の水〉の力で国は富み、王国民は皆しあわせに暮らしていた。

ところが何代目かの国王が悪心にとらわれ、となりの国「パープル帝国」と取引をして莫大な金貨と引き換えに〈魔法の水〉を独占的に汲み上げる権利をパープル帝国の商人に売り渡してしまった。

パープル帝国の皇帝は、その〈魔法の水〉を使って強力なドラゴン兵団を組織し、その一部は王国にも駐留することになる。

実は〈魔法の水〉をオオトカゲに飲ませると、空を飛び口からイナズマを吐くドラゴンに变化するのだった。

〈魔法の水〉をパープル帝国が独占することで、豊かだった王国の力は次第に衰え、王と一部の貴族だけが私腹を肥やし、王国民は飢えに苦しむようになる。

そんな時、ひとりの若者(主人公)が間違った王政を正すべく、仲間たちとともに立ち上がった。

しかし、パープル帝国と、その強力なドラゴン軍団を後ろ盾にする王国軍に対し、主人公と仲間たちの武器は、あまりに貧弱だ。

次第に劣勢に追い込まれる主人公と仲間たち。

その時、一人の〈使者〉が主人公のアジトを訪れる。

使者〉は、王国をはさんでパープル帝国と反対側に位置する「ピンク帝国」から来たと言う。

主人公が「ある条件」を飲んでくれれば、王国軍と戦うための金貨と、剣・鎧・弓矢などの武器を大量に提供してくれるという。さらにはピンク帝国の精鋭ドラゴン部隊も貸す用意があるという。

その条件とは、

  1. 主人公が王政を打倒した暁には、〈魔法の水〉を宮殿の泉から汲み上げる権利をピンク帝国の商人に与えること。
  2. ピンク帝国が崇める神「ピンク神」の神殿を王国じゅうに建設し、全王国民を強制的に「ピンク神」に帰依させること。

ここで主人公は悩む。確かに、ピンク帝国の支援を得られれば劣勢をはね返し王国軍に勝つ可能性が出てくる。

しかし、強力なドラゴン軍団に同じく強力なドラゴン軍団で対抗すれば、国中が戦火にまみれ、焦土と化し、多くの国民が巻き添えを食らい、命の危険に晒され、住む家を失うだろう。

条件を飲めば、主人公の反乱軍が勝った暁には、国の宝である〈魔法の水〉の泉を汲み上げる権利を他国に渡すことになる。

主人公自身は王国においては少数派のピンク神の信徒である。自分が信じる神の教えが王国じゅうに広まるのは望むところだ。しかし、強制的に全国民をピンク神に帰依させるというのは、あまりに乱暴な話ではないだろうか……。

「正義のために悪の力を使う」のは、本当に「正義」か?

この物語の結末を、まだ私は考えていない。

主人公にとって「悪い王」を倒し、王国の民を救うのは「正義」だ。

一方で主人公は、ピンク帝国の軍事的支援を受けるのは「悪」なのだという事も知っている。

ピンク帝国が主人公を支援しようと提案しているのは慈善からでも何でもなく、〈魔法の水〉の利権を手に入れ、王国に対するピンク帝国の影響力を手に入れたいからだ。

ピンク帝国という悪の力を使い、王国軍を打倒するという「正義」を行う……そのために多くの王国民を巻き添えにしドラゴン軍に国土を蹂躙させ、荒廃させる。

戦いに勝った暁には〈魔法の水〉の権利をピンク帝国に渡し、さらには全国民に強制的にピンク帝国と同じ神を崇めよと言う。

それほどの「悪」を行使してまで成就させなければいけない「正義」など、存在するのだろうか?